こっくりさん

2005年11月30日
 現代に流布しているこっくりさんは近年の流行のように思われがちですが、もともとは江戸時代以前から同様の降霊術・降神術が存在し、明治時代半ばにも日本中で異常とも言えるほどの大流行が起こっている。
 当時は三本の小さな竹を三つ又に組み、その上に飯櫃のふたや盆をのせた装置を使うのが一般的であった。この装置の周りに三人で座り、ふたの上に手をかざしてこっくりさんを呼び出すと、ふたが動き出して様様な質問に答えてくれるというものだった。その熱狂ぶりは相当なもので、京都・新京極には「狐狗狸伝授所」が登場、専用の「狐狗狸竹」を売り出すなどして警察の手入れが入ったこともあるという。
 こっくりさんの起源については諸説がありはっきりしないが、明治時代に起こった大流行に関してはほぼ間違いなくアメリカから伝わったものがその原因だとされています。
 欧米にも同様の降霊遊びは古くから見られ、特にテーブルを使いその動き方によって交霊を行う「テーブルターニング」は当時の竹と米櫃のふたを使う方法と酷似している。この他にも、霊がアルファベットを示して占い者と会話を交わす「ウィジャ盤」、霊による自動書記で占いを行う「プランセット」など多くの交霊装置があり、いずれもゲーム感覚で大流行した。日本に伝えられた当初も花柳界のお座敷遊びとしてであり、一般家庭にも単なる遊びとして楽しまれていたようだ。
 こっくりさんの語源にも諸説があり、うなずきを示す「こっくり」からきたとする説、装置の竹の足が「こっくり」と動くためとする説、あるいは道理を告げるという意味の「告理」から変化したとするなど様様ある。しかしやがて「狐狗狸さん」という字が当てられるようになって、日本古来の俗信である動物霊信仰・憑き物信仰と結びつくようになった。
 日本には古来から狐を始めとして狗や狸、猫などの霊を忌み嫌う傾向があるため、こっくりさんも次第に不気味な印象をもたれつつ行われるものになっていったのだろう。
 単なる遊戯であったにもかかわらず、日本の民俗社会の陰湿な部分に取り込まれ変貌していった顕著な例といえよう。

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